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『日本軍「山西残留」――国共内戦に翻弄された山下少尉の戦後』に対する評、感想
宮坂英朋氏(編集者。著者の先輩)

 岩波の辞典部にいた宮坂です。先日、竹内好春さんが米濱さんの新著『日本軍山西残留』をおくってくれました。重いテーマに襟を正し、さっそく読み始め、読み進めるほどに吸い込まれ、いっきに読了しました。専門家にむかって失礼とは思いますが、素人にも分かりやすく問題を整理され、ていねいに、深く、客観的に記述されていて、実にいい仕事をされたというのが第一番の感想です。

 ここ一週間は『山西残留』を縦から眺め横から眺めて過ごしました。登場する人物が多いので山下少尉を見失い、頭からその採録部分に付箋をはってまとめて読み直したりしました。これは私の感性に問題ありで、今は記述に濃度を加える存在として光っております。

さて、山西残留はあれだけ徹底的に敗れた戦争の中では信じられないような事件ですが、しかしいろいろな要因がむすびついて引き起こされ、帰趨次第ではもっと大きな混乱と犠牲を生じていたのだと知りました。

徹底的に戦って、うちのめされ、新しい日本が生まれたという捉え方に立てば、北支那方面軍の司令官、参謀、一部将兵、居留民らは徹底的に戦わず、したがって打ちのめされず、それゆえ自己を過信し、時代を読みあやまり、弾き飛ばされたのだと思います。戦後の澄田らの国際義勇軍の目論見など、笑うに笑えない出来事です。

それにしても山西残留から何か得たものはないだろうか。『山西残留』を読んでいて、ぐっと胸に来る場面があります。「前川手記」の描く宮崎・山岡の対決は、宮崎の迫力に圧されます。今村をふくめ人材ありの感を深くします。別の意味で、河本大作の「供述書」や城野宏の「日本人の立場」は、なかなか読ませます。

山下少尉の「坦白」は陰謀、解放軍との戦争、抑留、帰国を生き抜いた人間の大事な証言として、これこそ山西から得たものだと思います。ここには戦後の民主主義に連なるものが生まれています。山西残留は狂熱であったにしても、そのあぶくの中から山下少尉は生まれ変わるのだと思います。
最後に「「軍命はなかった」か」。本書執筆の主眼の一つは当然ここにあるわけで、筆者は克明に事実を追っています。読者としてこの問題をどう受け止めるか、私たちは今その地点に立っています。
「オーラル・ヒストリー企画」を知り、さっそくのぞき見しております。

この著作につぎ込まれたエネルギーの大きさを思い、その誕生をともに喜びます。ご自愛ください。
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テーマ:感想 - ジャンル:本・雑誌

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